追熟型と非追熟型果実の本質的な相違点である成熟エチレン生成機構の有無と果肉の軟化様相について、昨年度の結果を踏まえて、さらに詳細な解析を行った。 1 MADS遺伝子のクローニングと発現解析 昨年度はバナナとブドウ果実からMADS遺伝子をクローニングしたので、今年度はキュウリとメロンからのクローニングを行い、成熟に伴うこれらの遺伝子の発現解析を行った。ブドウでは、MADS遺伝子は成熟に伴って、発現量が減少した。メロンからクローニングしたMADS遺伝子は成熟期間を通して恒常的に発現していた。この遺伝子をプローブとして、キュウリでの発現をみたところ、果肉でのみ弱い発現がみられ、果皮での発現はみられなかった。キュウリのエチレン生成は果皮でのみみられることから、興味ある結果であった。 2 形質転換rinトマトの作出 rinトマトは、MADS遺伝子が欠損しているため、成熟能を欠如していることが知られている。そこで、上記でクローニングした各種MADS遣伝子をrinトマトに形質転換して、rinトマトの成熟能の回復を確認している。現在のところ、幼植物体にまで発育が進んでおり、導入遺伝子の確認を終えたところである。 3 軟化様相の異なる3種のナシ果実の細胞壁多糖類の可溶化と低分子化 昨年度は、セイヨウナシ、チュウゴクナシ、ニホンナシの軟化様相の相違は、ポリガラクツロナーゼ(PG)遺伝子の発現の違いにあることを明らかにした。この発現の相違は、細胞壁多糖類の可溶化と低分子化の様相とよく一致していた。しかし、多量のエチレンを生成するにもかかわらず軟化しないチュウゴクナシでは、PG遺伝子の発現はみられないのに酵素活性はセイヨウナシと同程度みられた。そこで、今年度はこの点を中心に調べたところ、セイヨウナシではendo-PGが作用していたが、チュウゴクナシではexo-PGの活性しかみられなかった。
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