研究課題/領域番号 |
14360028
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤崎 憲治 京都大学, 農学研究科, 教授 (10228976)
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研究分担者 |
吉田 英哉 岡山大学, 資源生物科学研究所, 助手 (90220665)
積木 久明 岡山大学, 資源生物科学研究所, 教授 (60033255)
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キーワード | オオタバコガ / 休眠誘導 / 休眠蛹 / 日長 / 温度 / 休眠覚醒 / 地理的勾配 / トレハロース |
研究概要 |
今年度に得られた研究実績は以下のように要約される。 (1)これまで実験室で見られた休眠率の雌雄差が野外においても発現するかどうか、および休眠反応が有効に機能しているか否かを野外網室における飼育実験により調べた。その結果、休眠誘導時期における雌雄差は見られなかったものの、第二世代成虫の産下卵では8月下旬から9月上旬に産下されたもののみが休眠蛹になった。秋の第四世代の幼虫生存率は季節が進行するにつれて急速に低下したが、蛹化したものはすべて休眠した。 (2)幼虫の発育期における日長や温度を変化させる実験を行ったが、温度を高温から低温に、また日長を長日から短日に変化させた場合に、より顕著な休眠誘導がなされることが分かった。また、亜熱帯性のオオタバコガと比較するために温帯性のタバコガにおいても日長反応を調べたが、日長に対してより鋭敏に反応して休眠が誘導されることが分かった。 (3)休眠覚醒の環境要因を明らかにするために、とりあえず冷却(5℃)の効果を調べたが、恒温・一定日長で誘導された休眠は、冷却期間の有無や長短にかかわらず、25℃条件下に移すとすぐに覚醒した。 (4)三重県、滋賀県、長野県、新潟県、および沖縄県においてオオタバコガ幼虫を採集し、そのうち沖縄県を除く4個体群の系統を作成したが、それらで休眠性における明確な地理的勾配は検出されなかった。 (5)トレハロースの含有量を測定した結果、休眠蛹でより増加することが分かった。したがって、本種の蛹の低温耐性は他の昆虫でよく知られているグリセロールではなく、トレハロースの蓄積によると考えられた。 (6)同じ個体群の中でも休眠率には大きな変異性が見られた。選抜実験の結果、休眠率の高いグループからは高い次世代、逆に低いグループからは低い次世代が得られたことから、それは遺伝的要因によるものと考えられた。
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