新規抗幼若ホルモン活性物質ethyl 4-[2-(6-methyl-3-pyridyloxy)butyloxy]benzoate(EMP)を見いだした。リガンドブロッティング法によりEMPの作用部位を探索するため、EMPのベンゼン環上のカルボキシル基に炭素8個のスペーサーと西洋ワサビのペルオキシダーゼを結合させたリガンドを調整した。このリガンドに結合するタンパク質の探索を、3齢から5齢幼虫のヘッドカプセルと蛹の卵巣濾胞細胞に対して行ったが、特異的に結合するタンパク質を検出することはできなかった。この一つの理由として、EMPの生物活性が十分でないことが考えられたので、さらにEMPをリード化合物として高活性物質の合成探索を行った。 側鎖アルキル基の長さを検討した結果、2-(6-メチル-3-ピリジルオキシ)ヘキシル体と4-メチル-2-(6-メチル-3-ピリジルオキシ)ペンチル体がEMPより高い活性を示し、さらにアルキル鎖を伸ばした場合、活性は低下した。そこで、アルキル鎖をヘキシル基に固定して、6-メチル-3-ピリジル部位の構造と活性の関係を検討したところ、置換フェニルやナフチル基は低い活性であったが、無置換フェニル基に最も高い活性が認められ、ピリジン環は活性発現に必須でないことがわかった。次にベンゼン環上の置換基エトキシカルボニル基をエチルあるいはアセチル基に変換すると、活性は低下し、無置換あるいは塩素原子にすると活性は消失したことから、エステル構造が活性に重要であることがわかった。また、強い活性を示したethyl 4-[4-methyl-2-(6-methyl-3-pyridyloxy)pentyloxy]benzoateの光学活性体をL-及びD-ロイシンから合成した結果、R体、S体とも早熟変態を誘導し、活性にほとんど差は認められなかった。
|