研究概要 |
1.カイコのキチナーゼ遺伝子BmChi-hについて カイコの新規なキチナーゼ遺伝子BmChi-hは,セラチア菌などの細菌やバキュロウイルスが持つキチナーゼと極めて高い相同性を示す一方で,相同遺伝子は他の真核生物からは見つかっていない。我々はこれを細菌あるいはウイルスからの遺伝子水平移動によるものと想像し,これまでにBmChi-hの発現解析とゲノム構造解析を行い,BmChi-hの転写が時期・組織特異的であること,5'-UTRに3つのアイソフォームが存在し,それぞれ別個のプロモーターから転写されることを明らかにしてきた。今回我々は近縁の鱗翅目昆虫からの相同遺伝子の単離とその構造解析を行った.ヤママユガ科2種・スズメガ科3種・ヤガ科1種からPCR法を用いて相同遺伝子を単離し,その配列を比較したところ,これら細菌型キチナーゼは互いに高い相同性を示し,機能的制約を受けることが明らかになった。さらに,ORFにイントロンが存在せず,かつ5'-UTRに複数のアイソフォームが存在する,というBmChi-hの特徴は,カイコ以外のオーソログにおいても保存されていることが示唆された。 2.カイコの全ゲノムショットガン解析から見いだされたミトコンドリア類似配列 約9600の全ゲノムショットガン配列のなかに,カイコミトコンドリアDNAと相同性のある配列が二つ発見された。これらは,いずれも1リードのショットガン塩基配列の一部だけがミトコンドリアDNAと相同性があった。ゲノムPCRで調査した結果,これらの配列は,ミトコンドリア由来ではなく,染色体由来であることが示唆された。
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