エクジステロイドによるカイコ前部絹系腺の予定細胞死の分子機構

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14360033
• 研究機関: 金沢大学
• 研究代表者: 桜井 勝 金沢大学, 理学部, 教授 (80143874)
• 研究分担者: 岩見 雅史 金沢大学, 学際科学実験センター, 助教授 (40193768)
• キーワード: 絹系腺 / 予定細胞死 / エクジステロイド / カイコガ

研究概要

昆虫が蛹へと変態するとき、新たな蛹の器官形成が始まるとともにそれまで機能してきた幼虫に特異的な組織や器官は予定細胞死により崩壊・除去される。これらの変化のすべては単一のステロイドホルモン、20-ヒドロキシエクジソン(20E)によりその引き金を引かれる。カイコガ前部絹糸腺は幼虫特異的組織であり、その予定細胞死は蛹初期に生じ、20Eにより実行される。本年度の研究により、以下の事が判明した。吐糸前2日前の絹糸腺は20Eに応答しないが、これは絹糸腺から細胞死抑制因子が出ているためであり、この因子は吐糸当日の絹糸腺の20E応答を抑制する。また、この因子は20E応答初期遺伝子及び初期後期遺伝子の発現を抑制する。現在この因子を精製・同定中である。DD法により得た新規遺伝子の機能解析は、キイロショウジョウバエのS2細胞を用いた機能解析の準備が整い、現在一つづつの機能解析を行っている。膜受容体を介した20Eの作用は、核の凝縮・分解及びDNAの断片化をおこし、この系には、カルシウム非依存的PKC、その下流にカスパーゼ3が関与することが明らかになり、核受容体経由の細胞収縮と明確な機能分化がおきていることが明らかとなった。また、膜受容体の生化学的特性の検証を終わり、可溶化方法も確立し、モノクローナル抗体を作成中である。

研究成果

• [文献書誌] Koyama, T., Iwami, M., Sakurai, S.: "Ecdysteroid control of cell cycle and cellular commitment in insect wing imaginal discs"Mol.Cell.Endocrinol.. (in press).
• [文献書誌] Koyama, T., Obara, Y., Iwami, M., Sakurai, S.: "Commencement of pupal commitment in late penultimate instar and its hormonal control in wing imaginal discs of the silkworm"J.Insect Physiol.. (in press).
• [文献書誌] Takaki, K., Sakurai, S.: "Regulation of prothoracic gland ecdysteroidogenesis activity leading to pupal metamorphosis"Insect Biochem.Mol.Biol.. 33. 1189-1199 (2003)