研究概要 |
窒素リサイクルは、イネの生産性に直結する重要な機構である。この機構で鍵を握る、老化葉身のGS1と若い器官のNADH-GOGATに着目し、それぞれの量を決定している複数のQTLを染色体上にマッピングした。統計学的に検出されたQTLの存在や形質への効果を検証するために、QTLを含む約40cMの領域のみがKasalathホモ接合体に置換されたC-22と遺伝背景であるKoshihikariをガラス室と水田で育成した。その結果、Koshihikariに比較してC-22の分げつ数、穂数、穂重量はいずれも増加することが判明し、QTL効果を置換系統で確認することができた。この成果をまとめ、本年度公表した。 穂数を規定しているQTL領域を絞り込むために、C-22のKasalath置換領域を相補する染色体置換系統群(SLs)を9系統作成した。幼植物期の分げつの抽出割合に関して、SLsを用いて評価したところ、穂数を規定しているQTLは、マーカー2-S152と2-S173の間、6.7cMの領域に検出された。また、分げつの抽出割合と葉齢に正の相関関係が認められ、幼植物期の旺盛な成育が、栄養成長初期の分げっ数の増加につながったと推察された。さらに、QTLの形質に対する遺伝効果を高めるために、幼植物期の葉齢の違いに注目し、形質評価法を構築した。マーカー2-S152と2-S173の間での組み換え系統を選抜し、幼植物期の5葉の抽出割合に関して、組み換え系統を用いて評価したとにろ、穂数を規定しているQTLは、マーカー2-S193とS10844の間、1.8cMの領域に狭めることに成功した。さらに、分離集団11,484個体からこのマーカー間での組み換え体291系統を選抜し、現在は23kbまで狭めた。 GS1機能の証明を、GS1;1遺伝子破壊変異体を用いて行い、その成果をまとめた。また、グルタミン情報伝達に関わることが期待されるPII様タンパク質の発現解析をおこない、その成果を公表した。
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