研究概要 |
本研究は、ダイズ根粒菌の遺伝生態の知見、脱窒の分子生物学、ゲノム科学の成果を駆使して、共生細菌の特性を生かしたN_2O抑止型脱窒生態系構築の学術的な基盤を明らかにするものである。平成16年度の研究成果は以下の通りである。 RS fingerprintおよび16S rRNA遺伝子の系統解析では、ダイズ根粒菌B.japonicumは2つのcluste BJ1,BJ2に分かれ、それぞれN_2放出型、N_2O放出型で構成された。B.japonicumは少なくとも、硝酸、亜硝酸、一酸化窒素の還元酵素遺伝子(napAB,nirK,norCB)を必ず保有し、さらにN_2放出型のBJ1株のみがN_2O還元酵素遺伝子(nosZ)までの全脱窒遺伝子を保有していた。 N_2OR活性があるB.japonicum USDA110は、嫌気条件下でN_2Oを取込んだが、nosZを破壊したUSDA110ΔnosZではN_2Oを取込まなかった。nos遺伝子群を含むコスミドをUSDA110ΔnosZに導入したところ、N_2OR活性を示し、N_2OR活性はnos遺伝子群に依存していることが明らかとなった。そこで、nos遺伝子群をN_2OR活性のないまたは弱い野生株に導入すると、N_2OR活性の付与および強化が観察された。 B.japonicum USDA110およびUSDA110ΔnosZを接種したダイズ根粒のN_2OR活性を^<15>N_2Oガスを用いて検討したところ、nosZ遺伝子に依存して根粒は^<15>N_2Oを取込みその98%以上を^<15>N_2として放出していることが明かとなった。さらに、ダイズ根粒根圏においても強力なN_2O除去能が観察された。 日本の農耕地土壌には、nos遺伝子を保有していないBJ2株が多数生息しているので、nos遺伝子群導入株やBJ1株を接種することにより、ダイズ圃場から放出されるN_2O fluxを低減できる可能性が示唆された。
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