研究概要 |
昨年度解析法を確立したX線光分子分光法(XPS)を用いて、腐植化度の異なる各種土壌腐植酸のN官能基組成を調べた。その結果、ペプチド/アミドNの全窒素に占める割合が66.7-90.1%といずれの土壌腐植酸においても最も高く、芳香族Nは3.0-18.7%、第一アミンNは6.9-19.9%であった。ペプチド/アミドNの割合は腐植化度の増大に伴い有意に減少し(r=-0.78^<***>)、土壌中において徐々主に分解されることが示唆された。一方、芳香族Nの割合は、腐植化度および芳香族炭素含有率の増大と対応して有意(r=0.92^<***>,r=0.94^<***>)に増加したことから、芳香環の発達した腐植化度の高い腐植酸には芳香環に組み込まれたNも多く、集積は起こらないものの明らかに分解速度が小さいことが推察された。 施肥Nの土壌中における形態変化を明らかにする^<15>N標識尿素添加土壌培養実験を継続し、1年後の各腐植画分中の施肥N量を測定した。6ヶ月から1年の間の全^<15>N量および各腐植画分中の^<15>N 量はほとんど変化せず、土壌バイオマス、腐植酸、フルボ酸画分およびヒューミンから施肥Nの6.1%、3.1%、33.4%、および22.1%がそれぞれ検出された。^<15>N CPMAS NMRスペクトルから求めた腐植酸のN官能基組成についても変化はなく、培養2週間後と比較して芳香族Nが相対的に増加していることが確認された。 化学肥料添加畑土壌における化学肥由来腐植N集積速度の窒素安定同位体比(δ^<15>N)による推定方法を確立するために、名大付属農場、愛知県豊橋農業技術センター内圃場に続き、静岡県、長崎県および徳島県農業試験場内圃場試料の分析を行った。しかしながら、土壌Nと施肥Nのδ^<15>Nの違いに起因する化学肥料区のδ^<15>Nの経時的減少は名大土壌以外では観察されなかった。
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