研究概要 |
同位体ラベル有機物を用いて2種類のポット実験を行った。(実験1)^<13>Cおよび^<15>Nで同時にラベルされた稲わら堆肥を水田土壌に施用して,水稲を栽培し,稲わら由来の炭素および窒素の吸収量を測定した。稲わら堆肥由来炭素は,施用量の1.25%が穂に,1.33%が茎葉部に,2.21%が根に蓄積されていた。これらの炭素量は,光合成由来炭酸同化量の0.24〜1.15%という低いレベルではあったが,水稲が経根的に堆肥由来炭素を吸収し,同化していることを定量的に示すデータが得られた。一方稲わら由来窒素の吸収は,炭素に比べて高く,施用量の10.9%となった。(実験2)^<13>Cラベルグルコースと^<15>Nラベル塩化アンモニウムを水田土壌に加え,水稲を栽培することにより,土壌と水稲中の炭素および窒素動態の解析を行った。その結果,栽培開始時に加えたグルコース由来炭素は,収穫時には,穂に1.6%,茎葉に1.5%,根に1.8%蓄積されており,実験1で見られた現象とほぼ同様な結果が得られた。また,本実験では,茎葉部に取り込まれたグルコース由来炭素が,穂に転流することも確認された。一方,窒素については,施肥窒素量に占める蓄積割合は,穂に30.6%,茎葉に17.8%,根に10.1%となった。土壌バイオマス炭素および窒素は,栽培開始とともに低下し,最高分げつ期に極小となり,その後,緩やかに上昇する傾向が見られた。次年度は,バイオマス炭素および窒素に含まれる^<13>Cおよび^<15>N量を測定することにより,土壌微生物バイオマスを介した土壌中の炭素および窒素の詳細な動態解明を行う予定である。また,代表的な土壌微生物を培養し,土壌に添加することにより,微生物成分の土壌における動態について検討を行う予定である。
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