研究概要 |
窒素収支が明らかにされた家畜スラリー還元畑土壌下層土から低栄養要求型脱窒菌を分解・同定し、脱窒を利用した窒素浄化技術の開発に向けた脱窒能、及び脱窒代謝過程で発生し環境負荷が危惧される亜酸化窒素生成能評価を行う。2002年度は、低栄養要求型脱窒菌の土壊層位別・時期別変動を解明した。 家畜スラリー長期連用試験圃場を対象に、表層から4m下層までの土壌層位別にスラリー秋期投入前に土壌試料を採取した。脱窒菌密度は、2種類の培地組成(標準培地:50ppm硝酸添加肉汁培地、あるいは低栄養培地:5ppm硝酸添加100倍希釈肉汁培地)を用いてMPN法により計数した。標準培地では硝酸イオンの消失から脱窒菌数を推定した(以下、普通脱窒菌数と呼ぶ)。また低栄養培地の場合には、気相を10%アセチレンガス添加アルゴンガスで置換し、亜酸化窒素ガスの集積から脱窒菌数を推定した(以下、低栄養要求型脱窒菌数と呼ぶ)。アセチレン阻害法により潜在的脱窒活性を評価した。 その結果、普通脱窒菌数は表層ではスラリー投入量(0,60,150,300t/ha)に対応した分布を示したが、下層では投入量との関係は認められなかった。一方、低栄養要求型脱窒菌数の場合、表層から下層までスラリー投入量に対応した垂直分布を示した。いずれの土壌層位においても、低栄養要求型脱窒菌数が普通脱窒菌数よりも10〜10^5倍多くなった。また、家畜スラリー投入量が多いほど、下層における低栄養要求型脱窒菌群が相対的に増加した。普通脱窒菌数及び低栄養要求型脱窒菌数は、いずれの場合も脱窒活性との有意な相関関係が認められた(前者r=0.756^<**>、後者r=0.462^<**>)。しかし下層土だけで見ると、有意な相関関係は認められなかった。
|