窒素収支が明らかにされた家畜スラリー還元畑土壌下層土から低栄養要求型脱窒菌を分離・同定し、脱窒を利用した窒素浄化技術の開発に向けた脱窒能、及び脱窒代謝過程で発生し環境負荷が危惧される亜酸化窒素生成能の評価を行う。2003年度は、家畜スラリー還元畑土壌から分離した菌株について脱窒関連遺伝子の特性を評価するとともに、地下水系に至る深層土壌の脱窒活性と脱窒菌群の垂直分布について調査した。 既に分離した低栄養性脱窒菌群のうち16SrDNA解析からproteobactria α-subdivisionと同定されたグループについて、脱窒代謝に関わる遺伝子の一つ(nirK)を対象に塩基配列を解析した。また2003年3月下旬、鹿児島県鹿屋市旭原町シラス台地の舞層から65m下層に至る土壌層位別コア試料を採取し、一般理化学性、MPN法による脱窒菌数、洗浄音波法により吸着型と浮遊型に分画した生菌数、アセチレン阻害法による土壌の潜在的脱窒活性を測定した。 その結果、分離した脱窒菌のnir-K遺伝子塩基配列の類似度を解析したところ、Bradyrhizobiun japonicumとBlastobacter denitrificans及びOchrovactumとEnsiferの2つのカテゴリーに分かれ、16SrDNAに対応した結果となった。シラス層位(4〜55m)の下に位置する粘土層(64.7m以深)において10^3nmol/日・g乾土レベルの表層クロボク層に匹敵する高い潜在的脱窒活性が認められた。脱窒菌数は20m以深の深層土壌・特に粘土層において表層と同等かそれ以上に増加する傾向が認められた。吸着型生菌数の場合は粘土層で明らかに増加した。以上から、粘土含量やT-C、T-N等の土壌特性が吸着型脱窒菌の増殖及び脱窒活性に好適な嫌気的環境を作り出し、脱窒活性が増加したと推察した。
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