研究概要 |
昨年度までに、九沖農研畑作研究部の家畜スラリー長期連用圃場の脱窒菌密度を脱窒菌計数標準培地(Tiedje 1994)と新たに開発した低栄養性培地で比較した。脱窒菌計数標準培地を低栄養性培地に替えると、とくに下層土の脱窒菌数が増加したことから、土壌中には多くの低栄養性脱窒菌が生存することが示唆された。そこで、低栄養性培地を用いて長期間培養するとともにアセチレン阻害法により脱窒活性の有無を判定する、低栄養性脱窒菌分離方法を開発し、これを用いて300t/ha処理区から低栄養性脱窒菌等61株を分離した。本年度は、分離した脱窒菌の16SrRNA部分配列(AB118811-AB118817,AB162052-AB162105)に基づき群集構造を解析したところ、データベース上に登録されていない新規菌株を含む多様な脱窒菌が同定された。分離菌株の多くが最終代謝産物としてN_2Oガスを生成するタイプであった。300t/ha処理区の各層位から採取した土壌試料を用いて、土壌DNAを抽出した後に、脱窒関連遺伝子に関係するプライマーnirK2F/nirK3R(Brakerら1998)の増幅産物をクローニングし、培養法によらない脱窒菌群集構造の多様性を評価したところ、表層では多様な脱窒菌群が下層では単純化すること、また根粒菌に近い菌群が表層から下層まで広く分布することが明らかになった。土壌中の脱窒菌を特異的に検出計数するDISP法の条件検討を行った。土壌層位別の脱窒活性、脱窒菌数、そして分離菌株の脱窒代謝特性等から、下層土に集積するN_2Oガス生成タイプの低栄養性脱窒菌の集積と群集構造の単純化は下層土壌環境のもとでは脱窒活性の増加に寄与しないと推定した。
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