研究概要 |
マアナゴ体表由来の2種のガレクチン、Congerin IおよびII(Con IおよびII)の加速進化がみられた糖鎖認識部位の構造と認識機構の詳細な相関を明らかにし、精密な糖鎖認識能をもつガレクチンを開発することを目的とする。本年度は、Con IとCon IIの加速進化がみられたアミノ酸残基を相互に置換した変異体(調製予定の30種類)に加え、昨年度類似の糖鎖認識特異性をもつことがあきらかになった変異を併せ持つ(S50N/E74Q)Con IIを作成した。ピリジルアミノ(PA)化蛍光標識した各種糖鎖(34種)との相互作用の解析を行い、合計31x34=1054通りの解離定数Kd値を求め、解析した。 その結果、(S50N)Con II、(E74Q)Con IIおよび(T107N)Con IIでは、共通の糖鎖構造(Gal β1-3GalNAc-)をもつGA1、GM1、GD1b、LNTなどの糖鎖への結合能が顕著に増加していた。また(T77K)ConIでは、シアル酸を含む糖鎖に対する結合能が増強していた。全体的な糖鎖結合能に対するCongerinの構造要素として、Val68Asn,Gln71Glu,Gln72Thr,Glu74Gln,Thr107Asnの変異、特にGln72Thrが大きく影響していることが判明した。このように、これら変異体の構造活性相関により、より強い特異性をもつ変異体のデザイン ・開発への有用な情報を与えた。 さらに、糖鎖結合能に顕著な変化が見られた変異体について、ヒト白血病由来Jurkat細胞に対するT細胞特異的なアポトーシス活性を調べたところ、アポトーシス誘導活性は糖結合能の変化と明らかな相関をしめした。Congerinのアポトーシス誘導能のメカニズム(ターゲットとなる受容体)を解析する上で有用な変異体を与えた。
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