研究概要 |
本年度は、Pseudomonas putida DS1株のdimethyl sulfide(DMS)代謝系ネットワークの解析を中心として研究を展開した。昨年度、DMS代謝産物であるdimethyl sulfone(DMSO_2)の代謝に必須な新規転写制御因子SfnR[Endoh et al.(2003)Microbiology,149,991-1000]の標的遺伝子を単離することに成功したので(第3のDMS代謝系オペロン)、まずはこの遺伝子とその周辺領域について詳細な解析を行った。この領域にはsfnAおよびsfnB遺伝子からなるオペロンと、sfnFおよびsfnG遺伝子からなるオペロンが互いに逆向きに約300-bpの間隔を置いて存在していた。相同配列を検索した結果、SfnAとSfnBは互いに30%程度の相同性しかないが、両方ともacy1-CoA脱水素酵素ファミリーに属しており、一方SfnFはNADH-dependent FMN reductaseと、SfnGはFMNH_2-dependent monooxygenaseと類縁性を示した。各sfn遺伝子の破壊および相補実験を行ったところ、DS1株のDMSO_2代謝にsfnG遺伝子が必須であることが明らかとなった。またノーザン解析およびレポータージーンassayを行った結果、sfnFGオペロンはSO_4^<2->の有無に関わらず、SfnRによって正に制御されることが明らかとなった。そこでsfnFGオペロン上流のSfnR結合部位を、gel mobility shift aasayとDNase I footprintingにより調べたところ、4つのSfnR結合部位が同定され、そのうちsfnF遺伝子に近接した2つがsfnFGオペロンの転写調節に機能していることが明らかになった。さらに、SfnR結合配列に部位特異的変異を導入することで、SfnR結合のための共通認識配列を示すことができた。今後、SfnGの酵素活性を測定するなど、sfn遺伝子の機能解析を行っていく。有機硫黄化合物の資化に関与するσ^<54>依存性の転写活性化因子について、その転写調節機構を詳細に研究したのは本研究が初めてである。一方、微生物学的手法によるDMS代謝系の進化適応については、昨年度に引き続きDMS、DMSO_2などDS1株が利用可能な基質と共に加えるDBTの最適量等について、選択圧を複数設定しながら馴養実験を行った。
|