本年度は先に分離した偏性嫌気性細菌Desulfitobacterium sp. Y51株について以下の項目を検討し、新たな知見を得た。 1.Y51株の特性:本菌は無機培地と酵母エキス(0.2%)に50mMピルビン酸ナトリウムを炭素源、電子供与体、5mMフマール酸ナトリウムを電子受容体として、この種の硫酸還元菌としては極めて良好に生育し、OD_<600>で0.6まで増殖した。また、PCE(テトラクロロエチレン)及びTCE(トリクロロエチレン)を最終電子受容体としてエネルギーを獲得する脱ハロゲン呼吸を行うことを明らかにした。 2.PCEデハロゲナーゼ酵素の精製と性質:Y51株を大量培養し、PCEデハロゲナーゼを精製した。本酵素は酸素に高い感受性を示し、精製は困難であったが、最終的に単一バンドまで精製した。本酵素の分子量は58kDaであった。次いでN-末端と内部アミノ酸配列を決定した。本酵素はPCEをTCEを経てcis-ジクロロエチレンへと脱クロル化するが、更に諸種のクロロエタン類に対しても脱クロル化した。 3.PCEデハロゲナーゼ遺伝子のクローン化:上記アミノ酸配列を基にオリゴプライマーを合成し、PCRを行い、PCEデハロゲナーゼ遺伝子(pceA)の一部を増幅し、ついで、これをDNAプローブとして最終的にpceAを含む2.8kbDNAを取得した。PceAの塩基配列から本酵素にはN末端にシグナル配列があり、タンパク質の折りたたみに関与するTat配列とFe_4S_4結合部位が存在した。
|