研究概要 |
前年度は強力なtテトラクロロエチレン(PCE)脱ハロゲン化偏性嫌気性菌Desulfitobacterium sp.Y51株からPCE脱ハロゲン化酵素(PCEデハロゲナーゼ)遺伝子(pceA)をクローニングし、その構造を明らかにした。本年度は本遺伝子の大腸菌での発現、抗体の取得、抗体を用いた酵素の局在性、pceA遺伝子の発現誘導に及ぼす諸種のクロロエテン類の影響、さらに新たに分離したPCE脱ハロゲン化菌T37株の性質等について以下の研究成果が得られた。 1.Y51株からクローニングしたpceA遺伝をpETベクターに連結して大腸菌に導入、発現を試みた。その結果、PCEデハロゲナーゼはHisタグのついた状態で発現が認められた。しかし、PCEに対する酵素活性はなかった。本酵素を精製し、兎を免疫して抗体を得た。この抗体を用いて本酵素のY51細胞での局在性を検討した。細胞を膜画分、細胞質画分およびペリプラズム画分に分け、タンパク質を抽出、SDS-PAGEに供した。PceA抗体を用いたウェスタン解析からPceAデハロゲナーゼはペリプラズム画分に認められた。 2.次にPceAデハロゲナーゼの発現に及ぼす諸種のクロロエテンの影響を検討した。トリクロロエチレン(TCE)を添加して培養した時に高いPceAデハロゲナーゼ活性が認められた。一方、シス-1,2-ジクロロエチレン(cis-DCE)添加ではPceかっせAデハロゲナーゼ活性が全く認められなかった。そこでm-RNAを抽出し、ノーザン解析を行ったところ、TCE添加で高いpceA-m-RNAの転写発現が認められた。一方、cis-DCE添加培養ではpceA-m-RNAの転写が認められなかった。すなわち、pceA遺伝子の発現はTCEにより転写レベルで誘導されること、逆にcis-DCEによりその転写が強く阻害されることが明らかとなった。PCEでも誘導が認められたが、TCEに比べてやや微弱であった。さらにPceA抗体を用いたウェスタン解析の結果はノーザン解析に結果と一致していた。 3.新たに分離したT37株はPCEをY51株と同様にcis-DCEへと脱クロル化したが、その活性はY51株と比べてやや弱かった。しかし、その脱ハロゲン能はY51株より安定であった。本菌は16SrDNAの解析からDesulfitobacterium fraperiiと同定した。
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