研究概要 |
1.Helix-Tern-Helixを含む転写制御因子の解析 前年度のマイクロアレー解析によりAhrCのターゲットと予想されたGlnAは更に枯草菌の菌体外プロテアーゼ遺伝子であるaprEを負に制御する因子であることが判明した。aprE転写開始点上流の種々の削除株による解析から、その作用点は転写開始点上流-299塩基から-340塩基までの間と予想された。一方、aprE転写はグルコースによるカタボライト制御を受けるが、この作用点も同位置にマップされた。この領域には負の制御因子であるScoCが作用する部位があり、この因子を介してaprEに作用することが示唆される。これらの結果は、GlnAまたはその産物およびグルコースのカタボライトが同一の負の制御因子を通してaprEの発現を制御していることが考えられる。 マイクロアレーにより、DeoRでいくつかの遺伝子が、また、PaiAではcitMがそのターゲットであるとの結果を得たが、RT-PCRにより詳細に解析したが再現性は得られなかった。これまでの我々の経験から、マイクロアレーでは所謂false positiveな遺伝子が高頻度で検出されてしまうことが観察されている。 2.aprEの発現制御因子に関する研究 aprEの正の制御因子守あるsenSをマルチコピーで導入し、転写開始点上流の領域を種々の長さに削除したaprE-lacZの発現を測定した結果、作用点は-340から-299にあることが判明した。既知の正負転写制御因子遺伝子破壊株でのマルチコピーsenSによるaprE-lacZ発現解析実験では、spo0A-abrB, degU, sinR変異ではSenSの促進作用は見られたが、scoC変異株では促進作用は観察されなかった。次に、scoC-lacZ発現への影響を調べたところ、SenSがこの発現を阻害した。これらのことからScoCは負の制御因子scoCの発現を阻害し、その結果aprEの発現を促進すると結論された。
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