研究概要 |
本研究年度では、枯草菌のHelix-Turn-Helix(HTH)を含む転写制御因子およびアルカリプロテアーゼ構造遺伝子aprEの発現制御因子に関する研究を行った。研究手法は、種々の転写制御因子の標的遺伝子をマイクロアレーで調べ、発現の差異が検出された場合にはlacZ fusionでの検討を行った。AhrC(HTH)では、既知の作用以外にプリン分解系遺伝子群の負の制御遺伝子であるpucRが標的であることが判明した。、また、AhrCはaprEの発現を負に制御し、さらに、GlnAの標的であるureオペロンやnrgAの発現を下降させることが確認された。AhrC,GlnAおよびAprEは、窒素源の確保という細胞が生きて行く上でのプロセスと関連が深く、細胞内においてネットワークが形成されていることが示唆された。ComK(HTH)では多くの標的が見つかり、それらの遺伝子の上流にはComKが結合するコンセンサス配列が見いだされた。HTHを含むAnsRとDeoRについても解析したが、既知標的以外は発見できなかった。2成分制御系の制御因子YclJ(HTH)についても検討し、その複数の標的遺伝子の配列から、YclJのコンセンサス配列をを発見した。一方、HTHを含む転写制御因子でaprE発現を正に制御するSenSについて検討し、その標的はaprEの負の制御因子であるSeoCを転写レベルで抑制することを発見した。また、本研究において、機能未知の遺伝子であるybaL(sayAと命名)がSenSとは逆にscoCを転写レベルで正に制御することを見いだした。aprEの発現には多くの正および負の制御因子が関与しているが、その意義は、アルカリプロテアーゼを含む菌体外プロテアーゼは大量に生産・分泌されるので、無駄なエネルギーを不要に使わないよう正負制御因子がバランスを保ちつつ厳密に制御しているものと思われる。
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