研究概要 |
病原菌の侵入、昆虫による食害などで植物体に傷害を引き起された場合、イネは誘導抵抗性と呼ばれる防御反応を発動し、ファイトアレキシン呼ばれる脂溶性低分子化合物が生産される。今回我々はイネの生産するジテルペン系ファイトアレキシンの炭素骨格生合成に関与する酵素遺伝子の網羅的クローニングに成功し、それらの機能解析を達成した。 まずUV照射により、非接触的に傷害を誘導したイネからmRNAを取り出し、cDNAを調製した。次いで植物のジテルペン環化酵素遺伝子中、相同性の高い領域で縮重プライマーを作成し、先に調製したをテンプレートにPCRを行った。得られた増幅断片をシーケンスベクターにサブクローニングした後シーケンス解析し、環化酵素遺伝子の候補を15種に絞り込んだ。これらのうちUV照射後に強く発現誘導が確認されたOSCyc1、OSCyc2、OsDTC1、OsDTC2、OsKS4、OsKS10について、タンパクの発現および機能解析を行った。その結果OSCyc1、OSCyc2は基質であるゲラニルゲラニルピロリン酸(GGDP)をsyn-CDPおよびent-CDPに変換するジテルペン骨格形成の最初の反応を触媒する酵素であることを突き止めた。次いでOsDTC1、OsDTC2、OsKS4、OsKS10を用いて基質であるsyn-CDPおよびent-CDPの変換反応を追跡したところ、それぞれent-cassa-12,15-diene,stemarene,ent-sandaracopimarradiene,ent-pimara-8(14),15-dieneの生成を確認した。従来単離されたファイトアレキシンの化学構造から、OSCyc1およびOsDTC2がoryzalexin Sの生合成に、OSCyc1およびOsKS4がmomilactonesの生合成に、またOSCyc2およびOsDTC1がphytocassanesの生合成に、OSCyc2およびOsKS10がoryzalexinsの生合成に関与していることがそれぞれ推定された。
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