研究概要 |
本年度は4'-エチニル-2'-デオキシアデノシンが生体中でアデノシンデアミナーゼにより活性の低いイノシン体に変換されるのを防ぐ目的で、アデノシンデアミナーゼの作用を受け難いことが知られている2-フルオロアデノシンを塩基とした4'-エチニル-2'-デオキシ-2-フルオロアデノシン(A)を合成した。Aは期待通り非常に優れたin vitro活性を示した。その活性試験の結果を以下に、現在の臨床薬で最も優れている活性をもつAZTと比較して示す。 HIV野性株に対する活性;A : EC_<50>=0.2nM, AZT : EC_<50>=51.1nM),3TC耐性株に対する活性;A : EC_<50>=3nM, AZT : EC_<50>=16nM),多剤耐性株に対する活性;A : EC_<50>=0.15nM, AZT : EC_<50>=>1,000.00nM),細胞毒性;A : CC_<50>=25,600nM),AZT : CC_<50>=>100,000nM),選択性指数(安全性指標);A : S.I.=110,000,AZT : S.I.=>2,000以上の様にin vitro生物活性試験結果は非常に優れたものであるので、動物試験,更に臨床試験の結果が期待される。 次に、リボースの環酸素原子を炭素原子に置換えたカルボサイクリックヌクレオシドの4'-エチニル誘導体の合成を研究した。ジヒドロオキシアセトンを原料として3-α-ヒドロキシ-4-α-エチニル-4-β-ヒドロキシメチル-1-β-(9-アデニル)シクロペンタンのラセミ体(B)の合成に成功した。Bの抗ウイルス活性は現在検討中である。
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