研究概要 |
エイズ化学治療の問題は耐性HIVの発現である。耐性が交差しない複数の薬剤を投与する所謂「カクテル療法」が開発されエイズ治療に非常に明るい兆しが見えているが耐性株の発現阻止は医療の面からも学問的にも解決すべき重要な問題である。本研究は、逆転写酵素(RT)限害活性を持つヌクレオシドに注目し、耐性株が発現しないヌクレオシドの設計・合成・生学的評価を行い耐性HIVが発現しないヌクレオシドの開発を目的とする。耐性株を発現させない4'-置換-2'-デオキシヌクレオシド(4'SdN)を設計し、4'-位の置換基と核酸塩基の組合せを変えて、抗HIV活性と毒性の関係を研究した。その結果、4'-位置換基は嵩高く無いこと、核酸塩基はプリンが良い、という傾向を掴んだ。4'-位置換基として-CNと-C≡CHを選び、各種プリン塩基との組み合わせを研究した。その結果4'-CN体は毒性が高いと結論した。4'-C≡CH体ははアデニン体(Ad):EC_<50>=0.012μM,CC_<50>=11.7,S.I.=975,ヒポキサンチン体(I):EC_<50>=0.15,CC_<50>=216,S.I.=1440,2-アミノデニン体(2AAd):EC_<50>=0.0003,CC_<50>=0.82,S.I.=2733,グアニン体(G):EC_<50>=0.0014,CC_<50>=1.5,S.I.=1071(cf:AZT=EC_<50>=0.001,CC_<50>=>20,S.I.=2000)現存する全ての耐性株にも有効という結果であった。マウス毒性試験の結果:2AAd,Gは3mg/kgで経口・静注共即日死であったがAd,Iは100mg/kgまで無毒であった。アデノシンデアミチーゼで2AAdがGにAがIに変換されることが毒性試験結果の解釈を難しくしたのでアデノシンデアミナーゼに安定な2-フルオロアデニン体(2FA)を合成した。2FAはEC_<50>=0.0002μM,CC_<50>=22,S.I.=110,000,現存する全ての耐性株にも著効を持ちマウス毒性も100mg/kgまで無毒という結果であった。
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