シガトキシンのようにポリオキシエチレン鎖による多環構造は、syn/trans型の立体化学が繰り返され、アセチレンの化学は、コバルト錯体が中員環エーテル形成の立体選択的反応として有効に働き、その立体制御もsyn/trans型のみ生成させることはすでに確立している。中員エーテル環形成後は、アセチレンコバルト錯体は、ロジウムを用いた高圧水添法・スズヒドリドやケイ素ヒドリド法による還元的脱錯体化反応などを用いる。ヒドロシリル化反応もコバルトは触媒量的な当量関係で進行する。CTXは、左右の2大セグメント合成を終え、アセチリド求核剤とアルデヒド求電子剤間で左右両セグメントのカップリングについてモデル方法論を確立した。さらに、予想される副反応について予め対策を練ることもできたので、より直裁的なルートを確立するため、アセチレンコバルトを位置選択的にケトンに変換する方法論を樹立した。全合成の完遂を目前としている。 テトロドトキシンについても、シグマトロピーを用いた糖質を出発する合成方法を2003に完成し、さらにDiels-AlderおよびOverman反応を機軸とした合成ルートで2004年にそれぞれ全合成を完成した。これらは、ナトリウムチャンネルに作用するテトロドトキシンとシガトキシンは、イオン流を停止する作用と開放する作用と、それぞれ反対の作用を示す両巨頭化合物である。^<13>Cアイソトープ標識化合物を合成し、活性を無くした天然テトロドトキシン代謝物の追跡実験が可能となる。すでに重水素原子を用いるナノLCMSによる追跡を開発しており、磯部の独特の手法によるものであって、基礎的な有機合成化学にきわめて多くの知見を与え、生物有機化学的・有機分析化学的な大きな進歩をも遂げることができた。
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