研究概要 |
本年度は,チャバネゴキブリ属のゴキブリについて以下の項目を中心に追究した. 1)チャバネゴキブリの雄背面分泌物組成の化学分析 性成熟したチャバネゴキブリの雄成虫は,雌に出会うと翅を上げて背面の分泌腺から雄フェロモンを婚姻贈呈物質として分泌する.雌がこの分泌液をなめる間に交尾に至る.雌の摂食行動を刺激するこの活性因子は,複雑な組成のオリゴ糖類とリン脂質の混合物から成るが,それら以外に非極性中性画分および両性画分に糖類の活性を増強する活性因子が存在することが明らかになった.非極性画分の活性因子はコレステロール,両性画分の因子はアミノ酸より構成されていることが判明した.以上のことから雄は雌に対して極めて食餌嗜好性の強い物質の混合物をフェロモンとして利用していることが判明した. 2)チャバネゴキブリ属の生態調査 Blattella属数種のゴキブリ類の各生活環境における生態調査を実施した.京都市丘陵地帯に棲息するモリチャバネゴキブリにおいては人工継代飼育が困難であり,この原因に迫るため野外における採餌行動など詳細な調査をした.日本の家屋害虫種とは食材環境を異にする種内系統間で雄の背面腺分泌成分がどのように異なるかを調べることを主目的として,ハワイ州におけるゴキブリ類の生態調査・試料採集を実施した.同地でサンプリングしたチャバネゴキブリ雌雄成虫より化学分析のため性フェロモン成分の抽出を行った.また,ワイマナロ地区の果樹園でヒメチャバネゴキブリの高密度集団の人的接点における採餌行動・配偶行動を調査した.本種がいろいろな点で家屋種と森林性種の中間の生活史をもつことが判明した.
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