研究概要 |
チャバネゴキブリ属数種について以下の項目を中心に生態調査・化学分析した. 1)チャバネゴキブリの雄背面分泌物組成のアミノ酸組成 チャバネゴキブリの雄成虫は配偶行動に際し,雌に出会うと翅を上げて背面の分泌腺から雄フェロモンを分泌する.雌は,この分泌成分(雄フェロモン)を摂食する.摂食行動を刺激する活性因子として,オリゴ糖類,コレステロールとリン脂質のほかに,一連のアミノ酸の関与を明らかにした.主要成分(トレオニン,プロリン,バリン,グリシンなど)の組成は,血中のものと類似していた.しかし,雌成虫に高い摂食刺激活性を示したアミノ酸はセリン,アスパラギン,イソロイシン,プロリンなどであり,組成との関連性は大きくなかった.人工的に調製したアミノ酸ブレンドと他の組成物の混合による,活性発現増強効果を調べた. 2)チャバネゴキブリ属3種における雄背面分泌オリゴ糖類の成分比較 Blattella属3種のチャバネゴキブリ類の雄背面分泌オリゴ糖成分を比較分析した.累代飼育したチャバネゴキブリおよび京都市丘陵地帯に棲息するモリチャバネゴキブリならびに沖縄本島のサトウキビ畑において採集したヒメチャバネゴキブリの飼育雄虫背面分泌物より,オリゴ糖画分を精製した.これをトリフルオロアセチルエステルへと導いた後,ガスクロマトグラフィーによる定量分析に付した.その結果,3種とも,グルコースオリゴマーを保持するが,チャバネゴキブリでは,とくにO-α-D-glucopyranosyl-(1→6)-α-D-glucopyranosyl α-D-glucopyranosideを多量に蓄積していることが判明した.生息環境の生態調査から,それぞれの種で食餌メニューの違いがあることを考慮すると,チャバネゴキブリのみが家屋害虫化したことと何らかの関連性がある可能性が示唆された.
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