研究概要 |
(1)経口免疫寛容により誘導されたT細胞の解析およびその低応答化の分子機構の解明:経口免疫寛容により誘導された低応答化T細胞について,次ぎのことを明らかにした。まず,この低応答化T細胞では,caspase-3の働きによりGADS-SLP-76を中心としたTCRシグナル複合体の形成に障害が認められた。また,抗原刺激によるT細胞抗原レセプター(TCR), PKC-θ,脂質マイクロドメイン(lipid raft)のT細胞-抗原提示細胞接触面への凝集,vavの活性化が低下しており,免疫シナプス形成に障害が認められた。また、この細胞でプロテインフォスファターゼSHP-1の発現量が上昇していることを見い出した。これらの特徴が経口免疫寛容T細胞の低応答状態の維持に関与することが示唆された。また,抗原の経口摂取により誘導されたT細胞が細胞表面分子CD62L/CD44の発現により,CD62L高発現CD44低発現細胞,CD62L低発現CD44高発現細胞の2つの細胞集団に分離できることを見出した。両細胞群とも増殖能およびIL-2産生能が低下し,免疫抑制能を有していたが,サイトカイン産生パターンが異なり,また抑制機能の特性に違いが認められた。これより経口摂取抗原によりこれらの細胞表面分子の発現パターンにより区別される2つ異なる調節性低応答化T細胞が誘導されることが示された。 (2)経口免疫寛容を誘導する抗原提示細胞の同定:ビオチン標識したタンパク質抗原を経口投与し,蛍光標識したアビジンを用いて,これを抗原提示する細胞を検出した。その結果,パイエル板B220^+樹状細胞が,経口投与抗原を抗原提示することが示唆された。 (3)無菌のT細胞抗原レセプタートランスジェニックマウスを作成し,解析した。その結果,腸管免疫系T細胞の抗原刺激に対するサイトカイン産生応答が腸内細菌の影響を受けることが示された。
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