1、SHARP2遺伝子の発現調節 L型ピルビン酸キナ-ゼ(LPK)遺伝子のエンハンサーユニットのLIII(炭水化物応答領域)と類似の配列を持つ脂肪酸合成酵素の炭水化物応答配列に結合する転写因子の候補として同定したSHARP2遺伝子の発現調節を検討したSHARP2mRNAはラット肝において高炭水化物食により、また糖尿病ラット肝においてはインスリンの投与により速やかに上昇した。この機構を初代培養肝細胞を用いて検討したところ、インスリンはホスホイノシチド3-キナーゼ経路を介してSHARP2遺伝子の転写を促進すること、このインスリン作用はグルコースを必要としないことが明らかになった。 2、HNF1とNF1の相互作用 HNF1とNF1ファミリータンパク質は物理的に結合することによりLPKプロモーターを相乗的に活性化するが、この時、NF1はLIIやNF1サイトに結合しなくても、部分的に相乗作用を示すことが判明した。 3、ChREBP遺伝子の発現調節 LIIIに結合する転写因子としてChREBPが報告されたので、ラットのcDNAをRT-PCR法により増幅し、クローニングした。これをプローブとして、ノーザン法により解析したところ、ChREBPmRNAはラット肝臓においては高炭水化物食により、初代培養肝細胞では高グルコース/インスリンによりLPKと同様の時間経過で誘導された。次に、ラット遺伝子ライブラリーからChREBP遺伝子のクローンを単離し、翻訳開始点上流約1100bpの配列を決定した。この領域には、HNF1やSREBPの結合配列に類似の配列が見いだされたので、レポーターアッセイで検討したところ、両転写因子共にレポーター活性を著明に促進した。
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