食事ポリフェノールはO-配糖体あるいはC-配糖体である。その吸収形態と吸収率を知るために、小腸細胞Caco-2に与えた。O-配糖体を与えるとほとんどが加水分解吸収された。しかし、漿膜側つまり血流側に排泄されたものは、O-配糖体そのものが投与量の約0.3%、加水分解されてアグリコンとなったものが0.07%、アグリコンのグルクロニド・硫酸抱合体が1.1%であった。ところが、C-配糖体は加水分解を受けずに小腸細胞内に取り込まれた。そして、C-配糖体の形態で投与量の0.3%が、その抱合体の形態で0.35%が漿膜側に排泄された。一方、アグリコンを与えると、8%がグルクロニド・硫酸抱合体として、5%がメチル抱合体として漿膜側に排泄された。そこで、これらを肝癌細胞のHepG2に与えた。配糖体も抱合体もHepG2細胞内にはほとんど取り込まれなかった。ところで、O-配糖体から生成するアグリコンは0.07%であるが、これも血流を循環していると考えられる。そこで、ケルセチン、ケンフェロール、アピゲニン、ルテオリンなどのアグリコンを10μM濃度でHepG2に与え、時間を追って核を取り出し、十分に洗浄後、核内の濃度と形態を分析するとともに、その核を活性酸素に暴露して、遺伝子の酸化的損傷を測定した。いずれのアグリコンも核内存在量は細胞に与えてから30〜60分で最大の0.2〜1nmol/10^7細胞となり、180分後にはほぼすべてが核外に排泄された。また、形態はほとんどがグルクロニド・硫酸抱合体あるいはメチル化体であった。そして、ケルセチンとルテオリンは、その存在量が多い30〜60分でのみ、遺伝子の酸化産物である8-OHdGの生成量を15〜25%抑制した。ケルセチンとルテオリンはカテコール構造を持っており、他の2つは持っていない。したがって、ポリフェノールアグリコンは細胞内に取り込まれ、さらに核内にも存在するが、遺伝子の酸化を抑える顕著な抗酸化能を示すのはカテコール構造のものであると考えた。
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