研究課題
基盤研究(B)
食事ポリフェノールの体内吸収をCaco-2細胞の一層培養系で分析し、体内で有効な機能を発揮するアグリコンの化学構造を解析した。1.アピゲニンO-配糖体はアグリコンとして細胞内に取込まれ、投与量の1.1%が抱合体として、0.07%がアグリコンとして血流側に放出された。C-配糖体は加水分解されず細胞内にもほとんど取込まれなかった。2.様々なフラノノイドを肝細胞のHepG2に与え、経時的に核を取り出し、フラボノイドを分析し、同時にその核を活性酸素に暴露した。いずれのフラボノイドも与えてから30〜60分で最大の0.2〜1nmol/10^7細胞となったが、ほとんどは抱合体であった。そして、遺伝子の酸化的損傷を抑える顕著な抗酸化能を示したのはB環がカテコール構造のものだけであった。3.Caco-2細胞への吸収時に、フラボノールは、その一部が特異的に3位のアミノ体に変換されて漿膜側に移行した。これは新規物質であった。アミノ体は元のフラボノールと比較して、抗酸化能やタンパク質機能調節作用は同等であった。しかし、抱合速度は元のフラボノールよりも4倍遅かった。このアミノ体がフラボノールの体内での活性形態であると推測した。4.ポリフェノールの混合物をCaco-2細胞に与えると、プレニル化合物のアルテピリンCは速やかに取込まれ、その24%が漿膜側に排泄された。しかも抱合を受けていなかった。5.アルテピリンCはHepG2細胞にも取込まれ、濃度依存的に遺伝子の酸化を顕著に抑えた。また、腫瘍細胞WiDrに与えると、p21の発現を促し、G_0/G_1停止期を誘導した。以上の結果から、体細胞内で有効な生理活性を発揮するバイオアベイラビリティの高い食事ポリフェノールは、フラボノールのように吸収時により活性の高い形態に代謝変換されるものと、アルテピリンCのように抱合を受けにくいプレニル化合物であると結論した。
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