不成績造林地に侵入した有用広葉樹の育成と林分CO2固定能の向上に関する研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14360078
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 小池 孝良 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (10270919)
• 研究分担者: 高木 健太郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助手 (20322844) ; 日浦 勉 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教授 (70250496) ; 笹 賀一郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (70125318) ; 牧野 周 東北大学, 農学研究科, 助教授 (70181617) ; 船田 良 北海道大学, 農学研究科, 助教授 (20192734)
• キーワード: 不成績造林地 / 侵入広葉樹 / 光合成・蒸散機能 / 窒素利用効率 / クロロフィル組成 / 窒素負荷量 / バイオマス / 光順化

研究概要

北海道では、度重なる気象害や病害・野兎鼠害によって衰退した造林地が散見される。特に北海道のカラマツ人工林では、当初期待した高い生産力は生き残った個体にかろうじて見られるが、多くの場合、木材価格低迷の中で放置されカラマツ人工林内へ様々な広葉樹が侵入し多層林の様相を呈することが多い。皮肉にも人工林造成時に雑木とされた広葉樹が高価格で売買されているのが現状である。一方では、温暖化防止京都会議(COP3)以降、森林のCO_2固定機能に大きな期待が寄せられている。近年では衛星データを用いた林冠の機能評価に主眼を置いた光合成生産力を推定する試みが盛んに行われているが、多層な森林では高い生産力は上層木だけではなく、下層の稚樹による貢献が無視できないが、その評価が十分には実施されていない。そこで、本研究では森林のCO_2シンク機能向上を最終目標とし、稚樹群が存在する樹冠下空間(トランクスペース)の機能を、稚樹と上層木(本研究ではカラマツ)の光合成機能に着目して生態系生産力を究明する。このために林内に設けたタワーから分光学的なモニタリングを行い、光合成生産機能と直結するパラメータを解明する。さらに、林冠の(CO_2)固定機能向上と稚樹にとっても光・水分環境の改善につながる上層木の間伐を行い、この前後の稚樹の環境応答能力に基礎をおいた育成方法を確立するための基礎情報を得る。さらに、森林の潜在的(CO_2)シンク機能を評価するためにも窒素富化試験を実施し、森林によるCO_2固定機能の増大を期待する。平成14年度には試験地を設定し、侵入した広葉樹の光合成能力の違いを明確にする事を目的に導入した携帯ガタ光合成蛍光蒸散測定装置による測定と、窒素計測装置による測定を開始した。

研究成果

• [文献書誌] 北岡哲, 奥山悟, 石井正, 小池孝良: "上層ボクの伐採が広葉樹前生稚樹の光利用特性に与える影響"日本林学会北海道支部会論文集. 51. 30-32 (2003)
• [文献書誌] 野口麻穂子, 香山雅純, 吉田俊也, 小池孝良: "冬山竿材を行った地域におけるトドマツ前生稚樹の光合成特性"日本林学会北海道支部会論文集. 51. (2003)
• [文献書誌] Ichie, T., Kitahashi, Y., Matsuki, S., Maruyama, Y., Koike, T.: "The use of a portable non-destructive type nitrogen meter for leaves of woody plants in field studies"Photosynthetica. 40. 289-292 (2003)
• [文献書誌] Wang, W., Osaki, M., Hirano, T., Hiura, T., Koike, T.: "Stomatal and non-stomatal limitation of Sasa senanensis raised in balance nutrition regimes"Bamboo Journal. 20. 13-21 (2003)
• [文献書誌] Matsuda, K., Shibuya, M., Koike, T.: "Maintenance and rehabilitation of the mixed conifer-broadleaved forests in Hokkaido, northern Japan"Eurasian J. For. Res.. 5. 119-130 (2002)