研究課題/領域番号 |
14360079
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
井良沢 道也 岩手大学, 農学部, 助教授 (40343024)
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研究分担者 |
檜垣 大助 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (10302019)
太田 岳史 名古屋大学, 大学院・生命農学研研究科, 教授 (20152142)
丸井 英明 新潟大学, 積雪地域災害研究センター, 教授 (10219545)
平松 普也 高知大学, 農学部, 助教授 (70294824)
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キーワード | 融雪災害 / 土砂移動 / 土砂災害 / 融雪浸透 / 河川水の流出成分変化 / 地下水流出 / 気温逆転 / 雪崩による地形変化 |
研究概要 |
本年度は、岩手県八幡平赤川流域を対象として、分布型融雪モデルの適用による融雪水量の把握精度を検証し、既存気象データセットによる可能性について分析した。また、高山帯山地における逆転層の形成による高標高域での気温の昇温、融雪水の浅層及び深層の河川水へ与える影響、地すべり地での地下流出の挙動、雪崩による崩壊地の推移について調べ、積雪・融雪に起因して発生する土砂移動現象の基礎的知見について探求した。 亜高山帯積雪域における積雪分布を把握する手法として、既存の気象データを有機的に組み合わせることで分布型融雪モデルの実行に必要なデータを推定し、現地観測を行なうことなく分布型融雪モデルを適用する手法を検討した。分布型融雪モデルの入力気象データとして、既存気象データセットによる推定値を用いた場合でも、積雪水量の再現性は良好であることがわかった。また、積雪分布に関しては、雪線の挙動を良好に再現することが確認された。 山岳地では逆転層の形成による高標高域での気温の昇温の可能性が指摘されている。分析の結果、山岳部での接地境界層内の温度勾配の逆転は、標高差500mでは頻繁に、標高差1000mではしばしば発生する。温度勾配の逆転は夜から朝にかけて山頂から山麓にかけて連続的に発生している。 八幡平赤川のような多積雪高山帯を流域に含む河川では、融雪水が大量に降下浸透することにより土壌深層に貯留されている地下水面を上昇させ、地中流出水を多量に流出させて深層崩壊を発生させることがあることから、河川水の流出成分の変化を経時的に分析した。河川の総流出量の流出成分と電気伝導度の測定により、河川水を浅層流出水と地中流出水の2つに分離し、流出成分の変化に対する水温とphの変化と、融雪期、降雨期、無降雨期での流出水の由来の変化を分析した。地すべり地におけるA, Bの2つの小流域における降水量と流出量を測定するとともに、流出水の電気伝導度の経時変化を分析した。地すべり地では隣接流域でも流出の様相が異なること、降水量よりも大きな流出が測定される場合があること、地下水成分分離から流域外からの地下水流入があって地すべり移動量をも規定していることが把握された。 1999年4月21日に岩木山で発生した大規模全層雪崩によって形成された裸地を特定し、その地形的特徴や植生回復や侵食の進行を明かにするべく分析を行った。その結果、岩木山では過去に繰り返して豪雨による荒廃地とは異なる地形特徴を持つ裸地が雪崩発生に伴って形成されており、雪崩が非常襲的なため回復傾向にあるが、ガリー侵食が進んでいる個所もあった。
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