研究概要 |
セイヨウハコヤナギ(Populus nigra)は活性型ジベレリン(GA)のうち、GA_1、GA_3、GA_4を保持し、このうちGA_3が地上部のバイオマス生産を極端に促進した。このポプラから、GA生合成の鍵酵素であるGA20参加酵素、GA3β水酸化酵素及び活性型GAを不活性化する7種類のGA2β水酸化酵素の遺伝子(PnGA2ox1〜PnGA2ox7)を単離した。ポプラ挿し木をGA処理(GA_3:0,15,45,150μM)し、GA20酸化酵素遺伝子、GA3β水酸化酵素遺伝子、7種類のGA2β水酸化酵素遺伝子の発現量の変化を、GA処理の前後で比較した。GA20酸化酵素遺伝子、GA3β水酸化酵素遺伝子の発現はGA処理にフィードバック的に阻害された。一方、GAβ水酸化酵素遺伝子のうち、葉と茎で発現するPnGA2ox1、PnGA2ox3、PnGA2ox6、葉で特異的に発現するPnGA2ox2、茎で特異的に発現するPnGA2ox4、PnGA2ox7の発現はいずれもGA処理により上昇したが、葉でのみ発現するPnGA2ox5の発現量は変化しなかった。こうして結果は、GA処理により、葉や茎で活性型GAであるGA_3含量が極端に増加したことで説明できる。また、除草剤ビアラホスや抗生物質ハイグロマイシンを用いた効率の良い組換えポプラの作出技術も確立した。さらに、GA20酸化酵素遺伝子やGAのシグナル伝達に関与する3量体Gタンパク質の遺伝子を過剰発現させた組換えポプラを作出し、ゲノムDNA上に組換え遺伝子の存在を確認した。現在、これら組換えポプラの成長特性を閉鎖系温室で解析している。本研究によりGA20酸化酵素遺伝子やGA3β水酸化酵素遺伝子の過剰発現、ないしはGA2β水酸化酵素遺伝子の発現の抑制により、樹木の成長を向上できる可能性が示唆された。
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