研究概要 |
本年度の研究計画は、(1)蒸気噴射乾燥専用治具の製作と性能試験、(2)蒸気噴射乾燥の基本メカニズムの解明、(3)蒸気噴射乾燥の乾燥挙動解明を、現有設備であるCO_2レーザのメンテナンスも含めて行うものであったが、(1)の設計段階で乾燥機構が十分解明されていなかったことが判明し、基本設計が詰められないことから、製作を見送った。よって、(2)と(3)の両計画がまとめて実施できる以下の実験を行った。 【実験】 スギ正角材(110mm×110mm×3.6m×40本、心持ち、背割りなし)から長さ600mmの試験体を5本ずつ切り出した。試験体の両端から得た厚さ30mmの試験片の含水率分布を測定し、両試験片の平均含水率をその試験体の初期含水率とした。試験体には密度5,000個/m^2で一側面から貫通するレーザインサイジングを施し、両木口面をシール後、蒸気噴射プレスの蒸気温度(110,120℃)と熱盤温度(120,140,160℃)を変えて、推定含水率が繊維飽和点を下回るまで蒸気噴射乾燥を行った。乾燥中の材重量は蒸気噴射を定期的に中断して測定した。噴射後、切り出した試験片から含水率と含水率分布を測定した。 【結果と考察】 得られた主な結果は次の2点である。 (1)蒸気温度120℃で熱盤温度160℃の条件では、約3時間で初期含水率100%が20%以下に下がり、乾燥割れは内部割れが僅かに認められる程度で、蒸気と熱盤の温度差が大きいほど、すなわち過熱蒸気になるほど、速く乾燥することが初めて示唆された。 (2)インサイジング密度が保存処理に有効な5,000個/m^2でもこれまでの最速乾燥時間である7時間の半分以下に短縮できたことから、さらにインサイジング密度を下げてもよいことが示唆された。
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