研究概要 |
平成15年度に実施したマイクロアレイ実験の結果から引き続き解析をおこない,次に示すような結果を得た。なお,実験試料はタケノコ,全長5m39cmの幼竹の第17節間(稈鞘は剥離)の上部と下部,成葉の各組織から抽出したmRNAをcDNA化したものであり,マイクロアレイはイネゲノムプロジェクトで作成されたESTクローンを1枚のガラスプレートに4,500クローン貼り付けたものを2枚使用し,9,000クローンの解析でおこなった。 今回は,ハイブリダイゼーション終了後,スキャナで読み取り定量化した各スポットの強度から,もっとも発現量が多かった組織である第17節間下部をタケノコ,第17節間上部,成葉のそれぞれ定量化した結果と比較することによって節間下部で発現量の多いクローンの解析をおこなった。 第17節間下部において他の組織より発現量が2倍以上多い遺伝子は635個もの遺伝子が候補として選抜された。解析すべきクローン数が多数にのぼったため,いずれの組織に対しても3倍以上発現量が多かった遺伝子についてさらに解析をおこなった。その結果,34個の候補遺伝子が選抜された。中でも,ショ糖合成酵素,セルロース合成酵素,ヘミセルロースの原料となるキシロースの合成をおこなうUDP-グルクロン酸デカルボキシラーゼなどの糖代謝に関連する遺伝子が約1/3を占めた。また,アクアポリンやストレス誘導に関連した遺伝子や細胞膜や細胞壁に結合するタンパク質などの遺伝子がみられた。 これらの解析結果から,細胞の分裂・伸長に関する遺伝子が多く発現していたタケノコのクローンとはかなり様相が異なり,細胞分裂後の細胞の成熟化に向う遺伝子が多く認められた。このことはタケノコの各成長段階において発現する遺伝子が明らかに交代することを示唆している。
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