研究概要 |
本研究は、組換えGTHをカイコ幼虫あるいはニジマス受精卵を動物工場として遺伝子工学的に大量生産し、これらのホルモンを用いて新しい魚類の催熟技法を確立することを目的としている。脳下垂体では、2種類のGTH(濾胞刺激ホルモン、FSHと黄体形成ホルモンLH)が産生され、それぞれ2つのサブユニット(FSH:α鎖とFSHβ鎖,LH:α鎖とLHβ鎖.α鎖は両GTHに共通)から構成される。 平成15年度の成果は、以下のとおりである。 ・カイコによる発現系 1.GTHの2つのサブユニット(α鎖とβ鎖)を共感染法によりカイコで発現させたものを雌雄のキンギョに投与し、FSHおよびLHともにメスにおけるエストラジオール(E)産生、雄におけるテストステロン(T)産生促進作用があることを確認した。 2.2つのサブユニットを結合した1本鎖GTHをカイコに接種して発現させた。また体内でのタンパク質の分解を抑制させると言われているCTPペプチドをC末端に付加したβ鎖およびα鎖を共感染法によりカイコで発現させた。これらのGTHを雄キンギョに投与し、1本鎖FSH、LHおよびCTP付加FSH、LH、すべて排精誘起作用をもつことを確認した。 ・ニジマスによる発現系 1.ニジマス4日胚で作製したキンギョの組換えLHおよびFSHは、ともにin vitroでキンギョ卵巣のEおよびT合成を促進した。また、両GTHはキンギョ精巣に対してもT合成を促進した。 2.ニジマス4日胚で作製したヒスチジンタグを付加した組換えLHは、ニッケルカラムを用いることで約120倍にまで濃縮することが可能であり、この粗精製ホルモンはキンギョ精巣のT合成を促進した。 3.ニジマス4日胚で高レベルで発現する遺伝子をEST解析により探索した結果、熱ショックコグネイト71がもっとも発現量が高いことが明らかとなった。さらに、本遺伝子のプロモーター領域はニジマス4日胚で非常に活性が高いことを見出した。
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