研究概要 |
(1)アユの回遊と遡上機構:三重県の宮川、祓川、銚子川などの河口域および河口周辺海域で採集されたアユの耳石の日周輪紋とSr : Ca比の日齢に伴う変化を解析した。その結果、河川を流下したアユ仔魚が体長20mm(30日齢)から砕波帯へと移動し、体長30mm(90日齢)以降、徐々に河口へと生息場所を移し、体長60mm(180日齢)頃から遡上を開始することが明らかになった。また早期孵化群が1)海域における成長率は高く、2)早期に大型で遡上し、3)河川に遡上した後も高い成長率を維持して、4)早期に大型で産卵する可能性が示唆された。 (2)マアナゴの変態過程と回遊機構:茨城県大洗沿岸に来遊した変態期マアナゴ仔魚の耳石日周輪紋と耳石Sr : Ca比を調べ、併せて消化器官の形成過程を組織学的に調べた。耳石輪紋間隔とSr : Ca比の日齢に伴う変化のパターンから変態期を推定すると、変態開始日齢は80〜177日であり、変態期間は約90日と推定された。消化器官の形成は変態開始後50日程度から顕著に進行するものの、胃は外部形態的に変態が終了した後に分化が始まり60日程度,で完了することが明らかになった。またマアナゴ仔魚は変態開始期(80〜177日齢)に沿岸域に接岸し、水深4〜10mの浅海砂浜域で変態着底することが明らかになった。 (3)ウナギ仔魚の回遊における水温履歴:二次イオン質量分析法を用いた酸素同位体局所分析をシラスウナギ耳石に適応してウナギ仔魚の水温履歴を調べた。その結果、ウナギ仔魚の孵化水温が発育初期における分布水温(16〜28℃)と同様であることが明らかになった。
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