研究概要 |
1.有明海における化学物質の汚染: 1998年と2001年に北部九州沿岸域で採取した二枚貝のサンプルについてTBT濃度を調べたところ,すべての試料からTBTが検出され,その濃度は0.015〜0.103μg/gの範囲にあった。有明海におけるアサリ体内のTBT濃度は1998年では0.089μg/g,2001年では0.021μg/gであった。本研究よりTBTの使用規制後も,沿岸域においてTBT汚染が続いており、その濃度は二枚貝類の再生産に影響を及ぼしうる濃度であると結論された。また、2002年に採取したタイラギについて重金属(水銀、銅、カドミウム)の測定を行ったが顕著な汚染は認められなかった。また、タイラギにTBTを暴露してその糖代謝物質の濃度を測定した結果、乳酸等が増加することが明らかになり、化学物質暴露の指標となる可能性が考えられた。 2.付着珪藻-および線虫の再生産に及ぼすTBTの影響: 本研究室で単離した付着珪藻-海産自由生活性線虫のバイオアッセイ系を用いて、TBT(0.326,3260,32600ng/L)に暴露して、その成長および世代時間を観察した。その結果、最高濃度で付着珪藻(Cylindrotheca closterium)の死滅し、線虫も斃死した。また、3260ng/Lの濃度では線虫の成長が若干阻害された。 3.タイラギの殻体開閉運動測定装置の開発とその応用: ホール素子センサーを用いてタイラギの殻体開閉運動測定装置を開発した。この装置を用いて、貧酸素に対する反応を検討した結果、異常な開閉運動を示す事がわかり、貧酸素に対するバイオセンサーへの利用が期待された。
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