研究概要 |
(1)北太平洋におけるサケ属魚類のバイオマス動態予測:北大練習船おしょろ丸と水産庁海洋調査船開洋丸により北太平洋に生息するベニザケとカラフトマスの成長と摂餌生態を調査研究した。その結果,海洋分布域は種特異性を示し,両種ともイカ類をはじめ魚類,端脚類,十脚類および翼足類など多岐にわたる生物を摂餌することがわかった。餌生物の時空間変動に関するクラスター分析の結果,サケ属魚類は餌環境と種内間の競争関係に応じて獲得しやすい餌生物を摂食する日和見的な摂餌戦略を展開することがわかった。またサケ属魚類のδ^<13>C-δ^<15>Nマップから,北太平洋生態系における彼らの栄養レベルは4段階と位置づけられ,種クラインを示すことがわかった。 (2)サケ属魚類による生態系における物質循環と生物多様性への貢献:アラスカ州イリアムナ湖においてベニザケ遡上親魚が湖沼とその湖畔林を含む生態系,植物プランクトンから哺乳類にいたる動物群集に及ぼす影響について安定同位体分析から明らかにした。 (3)水圏生態系における魚類の持続的保護管理のあり方に関するシンポジウム「生態系保全と水産資源の持続的管理:可能性と展望」を2003年11月27〜28日に東京大学海洋研究所にて主催し,16題の研究発表と総合討論を行い,魚類資源保護管理には生態系をベースとした順応的管理としての順応性,説明責任および反証可能性に基づくモデリングとモニタリングによるフィードバック管理の重要性を明らかにした。 (4)以上の研究成果は,下記の研究発表のほかに,次の国際シンポジウム・ワークショップにおいて報告された:NPAFC Workshop(基調講演,ホノルル),PICES 12^<th> Annual Meeting(ソウル,3題),World Summit on Salmon(招待講演,バンクーバー)。なお,国内ではシンポジウム4編(うち招待2編),学会6編,その他研究集会4編(うち招待2編)の報告を行った。
|