研究課題/領域番号 |
14360116
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
堀口 敏宏 独立行政法人国立環境研究所, 化学環境研究領域, 主任研究員 (30260186)
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研究分担者 |
山川 紘 東京海洋大学, 海洋科学部, 助教授 (80017061)
白石 寛明 独立行政法人国立環境研究所, 化学物質環境リスク研究センター, 室長 (10124348)
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キーワード | アワビ類 / 内分泌かく乱 / 卵精巣 / トリブチルスズ(TBT) / トリフェニルスズ(TPT) / 再生産 / ベリジャー幼生 / 稚貝 |
研究概要 |
1.アワビ類の内分泌かく乱に関する全国実態調査 全国32地点からマダカアワビ、メガイアワビ、クロアワビ及びエゾアワビ試料を入手し(原則として、各地点で各種について15個体ずつ)、常法による生殖巣組織標本の作製・観察とプロピル化/GC-FPD法による組織中有機スズ濃度の分析・定量を行った結果、入手した雌の標本において卵巣中での精子形成など雄性化の所見が認められた割合が0〜19%であり、組織中からブチルスズ及びフェニルスズ化合物が、微量ながら検出された。また検出された有機スズは筋肉よりも頭部において相対的に高濃度であった。組織中有機スズと雌の雄性化との間に関連性が窺われた。 2.アワビ類の内分泌かく乱に関する実験的検討 対照海域産メガイアワビを用い、トリブチルスズ(TBT)に対する3ヶ月間流水式連続曝露試験(対照;50及び500ng/L)を実施し、試験海水中TBT濃度及び供試個体の組織中有機スズ濃度の測定と生殖巣組織標本の観察を1.と同様に行った。その結果、卵巣中で少数の精子形成が観察されたが、TBT濃度依存性は不明瞭であった。 3.アワビ類の繁殖能力に及ぼす内分泌かく乱の影響の評価 有機スズ汚染が既知の海域(B海域)の造船所近傍でマダカアワビの種苗生産試験を行い、放卵量、受精率、胚の正常発生率、艀化率、艀化したベリジャー幼生の正常(異常)発生率と生残率、幼生の着底(成功)率、着底稚貝の生残率承び成長速度の推定を行った。今後、対照海域においても同様の種苗生産試験を行い、結果の比較を行う予定である。 4.アワビ類の幼生や稚貝に及ぼす内分泌かく乱物質の影響の評価 マダカアワビ、メガイアワビ及びクロアワビの受精卵及びベリジャー幼生に対するTBT及びトリフェニルスズ(TPT)の48時間止水式曝露試験を行い、半数致死濃度とともに発生・発達及び遊泳行動に関する半数影響濃度(EC_<50>)を推定した。その結果、TBTの48-h EC_<50>は0.15〜0.24μg/L、TPTの48-h EC_<50>は0.17μg/L(いずれも設定濃度として)と推定された。造船所やマリーナの近傍海域などでは上記のEC_<50>を上回る海水中TBT濃度が検出されてきたため、有機スズ汚染によってアワビ類幼生の加入阻害が生じてきた可能性がある。 5.天然海域におけるアワビ類の産卵、幼生や稚貝の分布と成長に関する検討 アワビ類初期稚貝の加入状況の把握を目的として、B海域への付着基質の設置に付着底初期稚貝の出現状況調査を行い、親貝資源密度と累積着底稚貝密度との関係を解析した。その結果、B海域における親貝資源密度(クロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビ)と着底初期稚貝の累積密度との間には相関が見られなかった。
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