研究概要 |
感染実験による探索 病原体が多く存在する器官を特定するため、病貝各器官を健常貝に移植した結果・外套膜、閉殻筋、血リンパ液上清で強く感染が成立した。外套膜・閉殻筋を中心に電顕・光顕を用いて病原体探索を行ったが、病原体の同定には至らなかった。これらの組織のホモジネート液を用いて感染試験を行った結果、病原性は失活せず、高い感染価を保持していることが分かり、病原体の精製・濃縮を行う上で役立つと思われた。 分子を指標にした探索 試験感染したアコヤガイの体液、組織を採取し,ヒドロキシアパタイトを用いたDNA精製を行った結果,PCRを行うのに必要な純度のDNAを採取することができた。これを鋳型に細菌のssrRNA遺伝子を増幅し,変性剤密度勾配電気泳動を行った結果,数本のバンドが識別され,アコヤガイ中に存在する細菌が検出されたと考えられた。主要なバンドの塩基配列を調べた結果,Pseudomonas属に近縁な細菌であると考えられた。 ウイルス学的探索 軟体動物由来の株化細胞としてカタツムリ受精卵由来細胞を入手したが、培養が困難でありウイルス分離に供することが出来なかった。また、血リンパからの核酸抽出に取り組むため、病貝血リンパ上清濾液を約800ml採取した。さらに、アコヤガイ病貝血リンパに対する単クローン抗体を作製した。その結果、愛媛県産赤変化貝の血リンパに対して極めて高い反応性を示す単クローン抗体が得られた。 細菌学的探索 アコヤガイ病貝血清を0.45μmのフィルターで濾過したものが,病原性を有することから,この濾液を一般細菌用培地であるNA, TSA, HI, BHI,マリンアガー2216,TCBS,およびサイトファーガ培地等に加え,アコヤガイ培地,M199改変培地およびマイコプラズマ用特殊培地を用いて細菌類の分離培養を試みた。これらの培地から分離された27株について,現在それらの性状を検討中である。
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