研究課題
基盤研究(B)
1)細菌学的探索:アコヤガイ赤変病の原因に濾過性の真正細菌類が関与しているかを確かめるため、様々な細菌分離培地を試み、分離された菌についての特性を明らかにした。さらに、病貝から分離された菌、もしくは病貝から検出された配列に対して特異的なプライマーを作成し、PCRをした結果、全ての菌および配列において、健常貝からも増幅産物が確認された。本疾病に対する真正細菌の関与については明確な結論を得ていない。2)ウイルス学的探索:アコヤガイから魚類株化培養細胞を用いてアコヤガイ赤変病の病原体を分離されたとされる報告の再現実験を行ったが、ウイルスは分離されなかった。一方、同じ試料を用いた感染実験および再感染実験は成立した。よってアコヤガイの病原体は、報告されている魚類株化培養細胞で分離されたウイルスでは無いことが明らかとなった。3)分子生物学的探索:アコヤガイ体内の細菌相を非培養的手法で解析し、病変と細菌相の関係を解明することを目的とした。アコヤガイ各組織からDNAを採取し、16S-rRNA遺伝子を増幅し、変成剤濃度勾配電気泳動で分離して泳動パターンを比べた。特徴のあるバンドは、塩基配列を決定し、近縁細菌を検索した。その結果、健常貝、試験感染貝、罹病貝で、細菌相に明瞭な違いは認められなかった。一方、罹病貝では日和見病原菌に近縁の細菌遺伝子が検出された。4)組織学的探索:アコヤガイ中での病原体の組織分布を調べるため、病貝の各臓器の組織片を健常貝に移植し、100日後に斃死率、赤色度および組織観察を行った。その結果、外套膜と閉殻筋に感染源が多く存在すると推定された。次に、病貝の外套膜と閉殻筋をホモジナイズして健常貝に接種し、140日後にサンプリングを行った。その結果、外套膜・閉殻筋・血清に高い感染価が認められ、これらの組織に病原体が多く存在すると考えられた。特に外套膜が主な感染器官と考えられた。5)免疫学的探索:アコヤガイ病貝に対する単クローン抗体を作製し、その反応性を検討した結果、得られた抗体はアコヤガイ感染症を発症したアコヤガイの血リンパ液に反応し、季節変化や感染実験などの経過観察からも、本疾病の診断液として有効であると考えられ、特許出願をした。
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Fish Pathology(魚病研究) 39・4
ページ: 203-208
Fish Pathology 39(4)
Fish Pathology(魚病研究) 37(3)
ページ: 149-149
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