研究概要 |
本年度は、まず,これまで収集した競り実験による消費者データを用いて,サルモネラ・フリー鶏卵に対する選好構造分析を行った。 分析は,被験者の属性を説明要因とした決定要因分析と,付け値の試行回数ごとの変動に注目した分析とに大別される。結果は,決定要因として性別やサルモネラ汚染率の主観的評価,通常購入している鶏卵の価格が付け値に有意な影響を与えていること,入札情報が次の入札に有効利用されていること,試行が進むにつれて個人属性により規定される度合いが小さくなる傾向などが観察された。明らかにされたこれらの事柄は,著者らが過去に行った郵送調査,若しくは対面型競り実験の結果と整合的なものであった。また全般を通して,被験者間の相互依存性や実験管理者に由来する偏向は観察されず,この点でネットワーク型競り実験の有効性が示された。 さらに,競り実験システムの一層の利便性向上を図るため,インターフェースの改良を行った。この改良では,1.被験者入力画面のデザインを一新しより魅力的なものとし,2.情報提供のためのスライドファイルの入れ替えを簡易に行えるようにし,3.管理用画面の操作性を向上させた。改良版のシステムで実際に競り実験を行うことは出来なかったが,これにより今後の利用価値は増大するものと期待している。なお,我々の競りシステムは,一つの財を対象にした第二価格入札だけでなく,より一般的な「M-units Nth-price Auction方式」に対応できるように設計されており,この点の汎用性は高いものと考える。
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