研究概要 |
本研究は,インターネットを競り実験の場と考え,安定性・利便性の高いシステムの開発と、それにより収集されたデータから食品安全性に対する消費者選好構造を明らかにすることを課題としたものである。 評価対象はサルモネラ・フリー鶏卵であり,競り実験は予備実験と本実験から構成されている。さらに、被験者の学習効果を調べるために、本実験を前半と後半とに分け、その間に"サルモネラに関する情報提供"を行った。すべての情報はweb上のデータとして納められており、入札・落札状況もタイムリーに確認できるようにした。入札方法には、ビッカリーの第2価格入札(Vickrey's Second Price Auction)を用いている。なお、実験の参加者は、千葉大学,宇都宮大学,帯広畜産大学などの学生である。 データを収集するのは,一つの財を対象にした第二価格入札のケースであるが,実験システムはより一般的な「M-units Nth-price Auction方式」に対応できるように設計した。また,調査内容の変更は,パラメータの設定やデータファイルの挿入だけで対応できるようにした。初期モデルの問題点を克服すべく,ユーザインタフェイスの改良とサーバー機器の処理能力の向上を測ったが,この点については今後一層の工夫が必要とされる。 付け値の決定要因としては,性別やサルモネラ汚染率の主観的評価,通常購入している鶏卵の価格が付け値に有意な影響を与えており,これは郵送調査や対面型競り実験の結果と整合的であった。また,入札情報が次の入札に有効利用されていること,試行が進むにつれて個人属性により規定される度合いが小さくなる傾向などが観察された。全般を通して,被験者間の相互依存性や実験管理者に由来する偏向は観察されず,この点でネットワーク型競り実験の有効性が示された。
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