地下水位の高い地点における掘削などの土木工事では、掘削底面におけるボイリングやパイピングなど浸透破壊が問題となる。浸透破壊は、技術が発展した現在においても発生することがあり、いまだ問題点を残していると考えられる。現場の条件は、通常三次元的であり、浸透破壊問題は本質的には三次元的に取り扱う必要がある。ここでは、まず、三次元浸透破壊実験装置を試作し、現有の水頭負荷装置・計測システムを組み合わせることによって、三次元浸透破壊実験ができることを確認した。 三次元浸透破壊理論を構築するためには、まず、その基礎となる一次元、二次元、二次元集中流、軸対称問題に関して十分考察を行っておく必要がある。理論的には、本年度は特に、二次元集中流、軸対称集中流問題に関して、広範な解析を行い、これまでにすでに得ている一次元(仮定)流、二次元流に関する解析結果と比較検討し、これら諸条件における浸透破壊特性の相互関係を明らかにした。そして、これらの問題を統一的に取り扱うことができることを示した。考察結果については、本年度、学会等で報告したが、今後、論文集等にまとめ投稿する予定である。さらに、今後、三次元浸透破壊に関して、安定解析手法の開発、その実際問題への適用を通して、理論的なアプローチを進め、実験結果との比較検討から、理論の構築に向けて研究を進めて行く予定である。 また、限界水頭差を簡単に求めるための無次元化に対する試みを行った。今回作成した図表を用いると、bを掘削半幅、Dを矢板の根入れ深さ、Tを地盤の層厚としたとき、b/D及びD/Tがいかなる条件の問題に対しても、浸透破壊に対する限界水頭差を容易に求めることができることを示した。今後、さらに考察を進め精度の高い図表の作成を試みるとともに、学会等で報告し、学会論文等に発表する予定である。
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