地下水位の高い地点における掘削工事では、掘削底面におけるボイリングやパイピングなど浸透破壊が問題となる。浸透破壊は、技術が発展した現在においても発生することがあり、いまだ問題点を残していると考えられる。現場の条件は、通常三次元的であり、浸透破壊問題は本質的には三次元的に取扱う必要がある。しかしながら、三次元浸透破壊理論を構築するためには、まず、その基礎となる一次元、二次元、二次元集中流、軸対称集中流、二次元放射流、軸対称放射流等の問題に関して総合的な観点から考察を行っておく必要がある。 実験的には、まず、軸対称地盤の浸透破壊に関して条件の異なる25ケースの実験を完了し考察を行い、成果について学会発表を行った。三次元浸透破壊現象は近似的には軸対称問題として取扱うことができると言われており、三次元浸透破壊問題を取扱う前に取組んでおくことが重要であると考えられる。今後、実験結果にさらに考察を加え学会論文として投稿する予定である。次に、二次元集中流浸透破壊実験に新たに取組み、2ケースの実験を行った。現在考察を行っているところであり、今後この考察をふまえ種々のケースについて実験を行ってゆく予定である。 理論的には、掘削問題における一次元仮定流、二次元流、二次元集中流及び軸対称集中流、復水工法における二次元放射流及び軸対称放射流に関して広範な解析を行い、種々の流れ条件における浸透破壊特性の相互関係を明らかにした。そして、これらの問題を統一的に取扱うことができることを示した。考察結果について、今後、論文集等にまとめ投稿する予定である。また、三次元浸透破壊に関して、安定解析手法の開発、その実際問題への適用を通して、理論的なアプローチを進め、実験結果との比較検討から、理論の構築に向けて研究を進めて行く予定である。 また、浸透破壊理論の進展のためには実際に問題のあった事例を取上げ解析を行う必要がある。これまでに10事例を取上げたが、本年度は新たに4事例についてケーススタディーを行った。また、これまでの2事例について内容をまとめ国際シンポジウムにおいて発表を行った。
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