研究課題
地下水位の高い地点における掘削工事では、掘削底面におけるボイリングやパイピングなど浸透破壊が問題となる。浸透破壊は、技術が発展した現在においても発生することがあり、いまだ問題点を残しているように考えられる。現場の条件は、通常三次元的であり、浸透破壊問題も本質的には三次元的に取扱う必要がある。三次元浸透破壊理論を構築するためには、まず、その基礎となる一次元流、二次元流、二次元集中流、軸対称集中流、二次元放射流、軸対称放射流等の問題に関して総合的な観点から考察を行う必要がある。実験的には、まず、軸対称浸透破壊に関して条件の異なる25ケースの実験を完了し総括的に考察を行い地盤工学研究発表会で発表した。今後、学会論文としてまとめる予定である。三次元浸透破壊現象は近似的には軸対称問題として取扱うことができるといわれており、三次元浸透破壊問題を取扱う前に十分考察しておくことが重要であると考えられる。次に、二次元集中流浸透破壊実験に関して条件の異なる合計12ケースの実験を行った。そして、水頭差の増加に伴う等ポテンシャル線分布及び地盤形状の変化の関係、水頭差H〜流量Q_<15>関係、変形開始時水頭差、破壊時水頭差などについて考察を行った。事例解析では、横江頭首工の改修、I川橋梁橋台基礎地盤の浸透破壊安定性について考察を行った。まず、横江頭首工の改修にあたっては、浸透流を防止するためにグラウト止水壁が堤体上流端下部に設置された。グラウト止水壁の設置により、エプロン下流側の地盤の浸透破壊に対する安全率がF_S=2.05からF_S=5.05に増加することがわかった。また、グラウトの透水係数は地盤の透水係数より2桁小さければ十分であることがわかった。次に、I側橋梁橋台基礎地盤においては、左岸下流側橋台構築時にパイピングが発生した。4基の橋台の構築における浸透破壊安全率を計算し、左岸下流側橋台構築時に基礎地盤の浸透破壊の発生の可能性があることを示した(F_S=1.461→F_S=0.826(1/1.77))。右岸下流側及び上流側橋台、左岸上流側橋台構築時には、一時的に浸透破壊に対する安全率が1/2.38〜1/2.28に低下するものの、もともと大きな安全率が確保されていたので、安全に施工できたと考えられる。また、左岸下流側取付け護岸工事においては、グラウトの注入によって地盤の浸透破壊安全率が上昇し(F_S=2.599)、安全に施工できたことを示した。地下水位の高い地点における締切り掘削地盤の浸透破壊安定性評価においては、構造物を構築しない状態における場合だけではなく、構造物を構築した一時的な状態に対しても配慮しなければならないことを、すなわち、工事の施工段階に応じた性能照査の重要性を指摘した。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (6件)
Proceedings of the 16th International Offshore and Polar Engineering Conference & Exhibition 2006 (ISOPE-2006) (In printing)
神戸大学都市安全研究センター研究報告 第九号
ページ: 273-287
Proceedings of the 5th International Symposium on Geotechnical Aspects of Underground Construction in Soft Ground (IS-Amsterdam 2005)
ページ: 923-929
農業土木学会論文集 73・6
ページ: 107-116
神戸大学自然科学研究科紀要 23-B
ページ: 41-50
神戸大学自然科学研究科紀要 24-B(印刷中)