研究概要 |
昨年度開発したPIV(粒子画像流速測定法)に基づく土の変位の高精度オンライン計測システムを活用して,走行車輪下近傍の土の変位およびそれに基づくひずみ分布の詳細な計測を行った。一方,本車輪走行現象を対象に,先に開発した下負荷面モデルおよび下負荷面摩擦モデルを導入した弾塑性有限要素プログラムの開発を行った。本プログラムにより,上記の車輪走行現象のシミュレーションを行った結果,土の変位,ひずみ分布いずれも実測結果に対する十分良い一致が見られた。また,計測された土の変位から算出されるひずみ増分データを下負荷面モデルに基づく応力算定プログラムに入力して地盤内応力の予測を行うとともに,小型圧力センサを用いて開発した応力センサによる実測結果と比較した結果,これについても十分良い一致が見られた。 クーロン摩擦則では,すべりが僅かでも生じれば摩擦基準面上の接線応力が発生するので,走行現象においては,すべり率が僅かでも生じれば最大けん引力が発生し,けん引力はすべり率に依存しない非現実的な予測がなされる。他方,下負荷面摩擦モデルおいては,摩擦基準以下の接触応力でもすべり変位が発現し,本モデルを導入した有限要素解析により,圃場機械分野の基本的課題ながら永年未解決であったすべり率とともにけん引力が増大する事実を表現し得ると期待される。走行実験条件に合わせた境界条件で有限要素解析シミュレーションを行った結果,十分良い一致が見られた。しかし,すべり率が低い状態で,実測においては負のけん引力が発生するが,予測においては,すべり率と同符号の正のけん引力が予測される。これは,車輪前面の土に盛り上がり,運動抵抗の予測の不備によると思われ,この点の改善が今後解決すべき課題であると判断される。 以上のように,下負荷面の概念により,物質自身の変形から物質相互の摩擦現象に至る一連の変形現象を統一的に表現し得たことは特筆すべきことである。
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