研究概要 |
本研究の目的は,生育環境下における様々な環境ストレスに対する植物の反応について,遺伝子発現解析により得られる情報をベースとして生理計測パラメータを加えて植物のストレス応答モデルを作成し,生育環境制御および環境モニタリングに応用することである。本年度は,モデル化のための予備的な植物実験として遺伝子発現解析を中心に実施した。 (1)様々な環境ストレス下における植物実験 気温,オゾンガス濃度,光質の条件を変化させて植物実験を行うことのできるチャンバーを製作した。チャンバーは計6台で,温湿度,二酸化炭素濃度,光強度および光質を制御することができる。1台には既存のオゾンガス制御システムを取り付け,もう1台にオゾン除去システムを取り付けた。チャンバー内には水耕栽培容器を設置した。これによりオゾンガス曝露実験および光質実験が可能となった。また,チャンバーを同化箱に見立ててガス収支法により個体群の光合成速度を測定する技術を確立した。 (2)発現遺伝子の抽出・定量技法の確立 オゾン濃度および光質を制御下でイネを育成し,葉からmRNAを抽出した。リアルタイムサーマルサイクラを用いる定量的PCR法により,活性酸素消去系,光合成系および出穂に関わる12種類以上の遺伝子の定量技術を確立した。またシロイヌナズナを用いた予備的実験として,酸素ストレスを与え,オリゴDNAマイクロアレイ法により,発現量が変化する遺伝子群のスクリーニングを行った。その結果,酸素濃度が2%の区では,対照区の2倍以上または2倍以下の値を示す遺伝子が100種類以上存在することが明らかになった。
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