研究概要 |
研究目的は,生育環境下における環境ストレスに対する植物の反応について,遺伝子発現と生理計測をベースとしてストレス応答モデルを作成し,生育環境制御および環境モニタリングに応用することである。 (1)様々な環境ストレス下における植物実験 気温,オゾンガス濃度,光質の条件を変化させて植物実験を行うことのできるチャンバーを製作し,ガス収支法により個体群の光合成速度を測定する技術を確立した。 (2)発現遺伝子の抽出・定量技法の確立 オゾン濃度および光質を制御下でイネを育成し,リアルタイムサーマルサイクラを用いる定量的PCR法により,葉の活性酸素消去系,光合成系に関わる12種類以上の遺伝子の定量技術を確立した。 (3)低濃度の長期間曝露実験 低濃度曝露における遺伝子発現量は、実験I(41ppbで7時間曝露)では活性酸素消去系の各遺伝子ともオゾン処理区で発現量が増加したのに対し、実験II(74ppbで12時間曝露)では増加量が少なかった。本結果により,イネでは遺伝子の転写レベルでもオゾンストレスへの適応メカニズムが存在していることが示された。 (4)中濃度の短期間曝露実験 中濃度の6hの短時間曝露実験(実験I:93ppb,実験II:185ppb,実験III:317ppb)における曝露開始時,曝露中,曝露終了後の発現量を調べた。低濃度実験の結果も総合すると,100ppb以下のオゾンでは,曝露期間中から活性酸素消去系の遺伝子発現は増加し,翌日はさらに増加し,その適応反応は長期にわたって維持されると考えられ,イネにおけるストレス適応の限界オゾン濃度は100ppb〜200ppbの間であると考えられる。 (5)ストレス応答モデルの作成 イネについて,個葉成長をもとにする成長モデルをベースに,オゾン濃度および光環境の影響を組み込んで,ストレス付加時の成長をシミュレートできるモデルを作成に,シミュレーションを行った。
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