研究概要 |
本研究では遺伝子情報を用いたアーバスキュラー菌根菌(以下AMF)同定法を確立し、この手法を基に、わが国の草原のAMF群集構造の地理的変異および変動要因の解析を行った。まず広範囲のAMFをPCR増幅できる新たなAMF特異的プライマーを設計し、継代培養胞子を材料としてPCR-DGGE法による優占菌種の同定を試みた。その結果、従来のプライマーでは困難とされている種を含むAMFのDNA増幅が可能で、特異的バンドも得られ、また多試料処理をも可能とするAMF群集構造の解析法が開発された。次に旧本列島南北9箇所の草地よりススキおよびシバを採集し、同法を用いAMF群集構造の地理的変異を調べた。なお採集地に、アロフェン質黒ボク土、非アロフェン質黒ボク土および黄色土草地が入るよう考慮した。その結果、ススキとシバ草地のAMF群集構造はGlomus-Ab, Ac, Ad群を主とし、Glomus-B群、Acaulosporaceaeの存在が確認された。Glomus-Ab群は宿主・生育環境を問わず、広く分布していたが、Glomus-Ac、Ad群は宿主によって出現頻度が異なったが、アロフェン質・非アロフェン質とも存在が確認された。根圏土壌の胞子組成は、どの草地ともGlomus rubiforme, Glosmus sp., Acaulospora koskei様の胞子が優占し、菌根形成菌組成とは必ずしも一致しなかった。次にシロクローバ人工草地を用いてAMF群集構造の変動要因解析に関する試験を行った。シロクローバ草地のAMF群集構造は造成初期から優占しているGlomus-B群やAcaulosporaceaeに加えて、群落の形成につれてGlomus-Ab, Ad群も優占化し、また高レベルの土壌可給態リン酸濃度は菌種を単純化させ、群集構造に大きく影響することが明らかとなった。すなわち安定した群落の草原のAMF主要菌種はほぼ類似しているが、植物種・土壌環境(特に可給態リン濃度)・造成年次などにより変動することが示された。以上最終年にあたりこれまでの成果を報告した。
|