研究課題/領域番号 |
14360158
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齋藤 忠夫 東北大学, 大学院・農学研究科, 教授 (00118358)
|
研究分担者 |
北澤 春樹 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (10204885)
|
キーワード | 乳タンパク質 / エピトープ解析 / アンジオテンシンII / ATI受容体 / 降圧性ペプチド / SHR / 空咳 |
研究概要 |
[目的]本研究の狙いは、空咳の原因となるアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害せずに、生成する昇圧ペプチドであるアンジオテンシンII受容体(AT1レセプター)をブロックすることで、降圧効果を示すペプチド成分、食品として安全性が担保されている乳タンパク質より誘導・調整し、その利用を図ることである。とくに、利用面では我々が既に検討しているプロバイオティクスを利用したヨーグルトに用いて、有用乳酸菌と生理活性成分を加えたシンバイオティクスを作出し、より高齢者などの建国を考えた、新規降圧食品を提案することも目的である。 [方法]本年度は、世界的なペプチド供給メーカーであるオランダのDMV(社)の市販ペプチド素材に対して、まず、ACE阻害活性を検討し、ついで、動物を用いた降圧活性を検討し、両者を総合的に検討することで、ヒトに対しても血圧降下作用の期待される試料を選択することを目的とした。また、そ過程で、血圧降下作用は高いが、ACE阻害活性の低いペプチドを見出した場合には、以下の実験系を用いて、さらに検証を進めた。すなわち、ヒト動脈内皮平滑筋細胞の培養系およびラットの各種各種臓器(肝臓、肺、腎臓など)より調製した膜を用いて、AT1阻害活性を示すペプチドの検索を行った。実験には、ヨード125で標識したアンジオテンシンIIを用い行った。昨年度に、降圧活性を示すテトラペプチド:ALPMを単離精製しており、このAT1阻害活性も検討した。 [結果]市販のペプチド素材の12種類に対して、in vitroでのACE阻害活性およびin viroでの高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて、血圧降下作用を検討した。その結果、4種のペプチド素材で、-18mmHg以上の降圧効果が確認された。最も高い降圧効果の認められたWE80BG(ホエイタンパク質由来)に絞り、その中に含まれる降圧ペプチドの本体に迫った。各種クロマトグラフィーを駆使して標的ペプチドを単離精製した。質量分析、アミノ酸組成分析およびN-末端配列分析により、このペプチドはテトラペプチドALPMであることが判明した。このペプチドは、降圧活性は高かったが、ACE阻害活性はそれほど高くなかった。そこで、新たに開発したラット肝臓膜に対するAT1阻害活性を調べた。その結果、確かにこのペプチドがアンジオテンシンIIの受容体に対して結合阻害性を有することが証明された。文献的には、ペプチド性の物質の報告例が一例あるだけであるが、このペプチドは新知見である。今後は、さらに、多くのペプチド素材に対して、この手法でペプチド検索をすれば、空咳の心配の少ない、安全性の高い食品由来のペプチドを多く見いだせるだろうという展望が開けた。
|